2013年6月8日土曜日

O2Oとコンテンツマーケティングの交差するところ、マーケティングのミライ。

6月のイマジナクトラボ勉強会アイリッジCOOの黒瀬翼さんにO2Oの今とミライについてお話しいただき、さらに翌日オリジナルコンテンツ用のインタビューまでお付き合いいただきました。

瀬戸内海をバックに熱く語る黒瀬さん(奥)。手前の後頭部カリアゲ青シャツメガネがワタクシ。
こちらの対談コンテンツも近日公開予定です。


「オマエ最近はコンテンツマーケティングにフォーカスしてたんじゃあないのか??」

ハイ。そんなお声を頂戴しそうですけど、これがまたイイんです。
例の「弱い紐帯の強さ」というアレですよアレ。いまコンテンツマーケティングにフォーカスし始めたからこそ、O2Oのエキスパートとの対話から見えてきたものもあるように思うんです。そこで、今回はその気づきについて書いてみようと思います。


O2Oに対する私の誤解

黒瀬さんのレクチャーと対話を通じて私なりのO2Oに対する考察を超カンタンにまとめると以下の通り。
※以下はワタクシ花崎の個人的な考察であり、黒瀬さんご本人のお考えとは異なる部分もあるかもしれません。あらかじめご了承ください。

■O2Oの本質は最新のテクノロジーを使ってお客様との距離を縮めること

■そして「リアル」な関係性をよくしていくことこそが大切なんだということ


店舗に足を運んでもらうにはそれなりの「動機」が必要ですよね。
たとえば...
「お得だから行く」とか「楽しそうだから行く」とか「役立ちそうだから行く」とか。
フィジカルな店舗で足を運びたくなる「何か」が行われているワケです。

お店側の企画実施手順としては
①まずその動機付けのネタを考えて
②イベント(出来事)化し、
③それらを情報として適切な場所、適切なタイミング、適切なコンテクストで適切な人に「情報」として届けると。

そして、お客様との距離を縮め、リアルな関係性をよくしていこうとすればするほど、お店や現場のイベント(出来事)の質が重要になってきますよね。たんに人集めりゃいいってもんじゃないという。

O2O(online-to-offline)っていう目的志向なコトバのせいかもしれませんけど、私これまでより短期的な成果にフォーカスしたものというイメージをなんとなく持っていました。たとえばカンタンにいうと「位置情報×スマホ×動機付け情報=ご来店」をいかに効果的に実現していくか、を毎回突き詰めていく感じ。

でも実際は、短期的な集客効果はもちろん、それらをいかに長期的な関係性につなげていけるかが本当の意味で勝負の分かれ目といったところでしょうかね。


見えてきたコンテンツマーケティングとの共通点

ここまでお読みいただければもうお分かりかもしれませんね。

O2Oのポイントのひとつとして私は、
「お客様との距離を縮め、関係性をよくしていくために店頭、現場でのイベント(出来事)の質を担保すべし」
ということを挙げました。

そして「イベント(出来事)」の部分を「コンテンツ」と置き換えるとどうでしょうか。
そのままコンテンツマーケティングのポイントに通じると思いませんか?上質なコンテンツを見つけてもらいやすく提供すること。そしてオーディエンスの信頼を得て、関係性を育むこと。これは現在注目されている2つのマーケティングキーワードに共通する本質かもしれません。

そして、コンテンツマーケティングにもO2Oにもコンテンツやイベント(出来事)になり得る「ネタ」が必要です。さらにいえばコンテンツマーケティングにおいても、O2Oと同様にフィジカルな体験をともなう「ネタ」はとてもパワフルに機能すると思います。


音楽業界にみるリアル体験のチカラ

音楽業界のコンテンツ販売が構造的な不振に陥って久しいですよね。そんななかライブ収入に注目が集まっているのはご存知でしょうか。

『1600億円-音楽業界でまさかの「逆転現象」発生中(President Online)によると、パッケージ販売のプロモーション的なかつて位置づけから、ライブそのもので収益をあげていこうという流れになってきていて、ライブの公演数も増えてきているようです。


「CDが売れないから仕方なくライブで収益あげるしかない」とか「ライブ数増加もあり客が入るものと入らないものに二極化」などの意見もありますけど、私は「生活者がCDは買わなくなったのに、ライブにはお金を払って観にきてくれる」というのはライブがもつリアル体験のチカラだろうと思います。体験としてのインパクトが違います。
どんなに時代が変わろうとも、人間にとってリアル体験に勝るものはない。そう思いませんか?

 ©iStockphoto.com/dwphotos



「リアルな体験」を中心に据えてユーザー体験をデザインする

O2Oの場合は売り場のネタ=イベント(出来事)はおのずとリアルな体験になりますけど、コンテンツマーケティングの場合、意識しなければリアルな体験をともなわない「情報」だけになりがちです。

もちろん情報として役立つコンテンツは絶対必要です。くわ
えてオーディエンスとの共通体験をリアルに得られる機会をセットし、それらを起点にコンテンツを充実化させることで、より効果的にオーディエンスとの距離感を縮められるようになると思います。

そのあたりを念頭においてユーザー体験をイメージして、情報&導線のデザインをするとよろしいんじゃあないかと。


不易と流行

いまマーケターが注目している「コンテンツマーケティング」も「O2O」もコトバとしては数年後には死語になっているかもしれません。一方でそれらは、もともとあるマーケティングの本質を新たな視点からフォーカスし、照らし出した考え方のように思えてきました。そういった意味で、両者の共通点=顧客・オーディエンスとの関係性をリアルで育むという視点はいつの時代も大切なんだと思います。

マーケティングの「不易」は忘れずに、時代にあわせてテクノロジーやツールを適用していければいいですね。


というわけで、今日はおしまい。

2013年5月25日土曜日

続・わたしたちイマジナクトラボは自らコンテンツマーケティングの実験台となり、その様子をブログなどで継続的に発信してまいります。で、具体的には?

前回のブログで、イマジナクトラボ自体の取り組みをコンテンツマーケティングの実験に活かし、その気づきを公開すること、そしてその背景についてお伝えしました。
そこで今回は、基本的な実験と公開の進め方について書きたいと思います。


イマジナクトラボの取り組みを図解してみるとこんな感じ

まずは、現状のイマジナクトラボの取り組みを俯瞰してみましょう。

改善の余地大アリ=飛躍の大チャンス!

①イマジナクトラボはもともと無料セミナー・勉強会などのイベントから始まりました。
リアルな学びの場をオーガナイズしたことある方はわかると思いますが、そのコンテンツはとてもパワフル。ウチの中核的なコンテンツは実はリアルイベントなんですね。

②リアルイベントでご登壇いただいたエキスパートのみなさんを中心にインタビューを行い、コンテンツ化ウェブ上からお読みいただけます。PDFでもご提供しています。
また不定期ですが、コンテンツマーケティングやストーリーテリングに関するブログもアップしています。

③ソーシャルメディアはFacebookGoogle+を活用しています。
おもに海外からの情報をキュレーションしています。
もちろん告知チャネルとして新着情報も。

「やりたいこと、かつできること」をすこしずつふやし、それらを継続して現在に至っております。

たとえば...
社内スタッフのスキルアップのためにセミナーやろう!
→せっかくだから社外の方にも来て参考にしてもらえばいいんじゃない?
→セミナー・勉強会の誕生!

あるいは...
セミナー参加者との情報交換の場があればいいなあ。
→フェイスブックページを利用しよう!
→どうせやるなら、全国のマーケターとつながりたいよね。
→その人たちにも喜んでもらえるコンテンツ必要だね。
→セミナーの講師の方に取材して対談コンテンツをつくって提供しよう!

といった具合ですね。

したがいまして、ゴールを設定して逆算方式で具体的な施策群を考えるといった戦略性はあまりなかったと反省しています。ソーシャル偏重の現状はこのあたりに起因しているんだと思います。

このように「やるべきこと」じゃなくて「やりたいこと」をスタートにするのはリスクもありますが、一方でだからこそ「スタッフ補充なし」「通常業務そのまま」でも膨大な作業量をともなうプロジェクトを地道に続けてこれたんじゃあないかとも思います。

まあ足りないところはこれからやっていけばいいですよね。わっはっは。


で、これからどうする?

まずは、全体最適を実現するためのフレームを用意します。
 コンテンツマーケティングは非常に取り扱う領域が広いので、先輩成功者のみなさんが活用しているフレームを活用していきたいと思います。これによりプロジェクト全体と進捗を把握しやすくなるし、「できてること」と「できてないこと」がよくわかるようになると思います。
世の中にはいろんなフレームがあると思いますけど、今回はSMX WEST 2013のワークショップで学んだ、Vertical Measures社のThe Vertical Measures Approachをベースに進めていきたいと思います。もちろん、他のソースから得られる情報も加味してウチなりのフレームにカスタマイズはしていきたいですね。

3月に学んだコンテンツマーケティングのフレームワーク


バクッとフレームをご紹介!

The Vertical Measures Approachは、コンテンツマーケティングを8つのステップ(要素)に分けて、戦略立案から実施、効果測定までをモレなく、ダブりなく進められるように設計されたものです。

Step1 : 戦略をつくる
目的、オーディエンス、スタッフ、コンテンツ、近未来ビジョンなどを明確にしていくフェーズ。
前提として「パブリッシャーとして考える」ことが大切だそう。コンテンツそれ自体を製品やサービスと捉え、その品質や流通、プロモーションなどを組み立てていくというワケですね。
     
Step2 : 調べる
キーワードリサーチやソーシャルリスニングを活用して、オーディエンスの興味・関心を知り、コンテンツづくりや流通などの成果アップに活かしていくためのデータ収集フェーズ。

Step3 : コンテンツをつくる
コンテンツマーケティングが普及してくると、情報バクハツのトレンドがさらに加速されますよね。そんな状況で目立つための王道は「上質な」コンテンツをつくること。
オーディエンスはコンテクストによって、「即答してほしい」「詳しく教えてほしい」「インスパイアしてほしい」という3つの欲求をもっているようです。これらに対応したコンテンツを提供する必要がありそうです。
     
Step4 : コンテンツを整える
おもに検索サイドで見つけやすくしてもらえるようにコンテンツを仕立てていくこと。SEOのために重要な要素を洗い出して、一つひとつつぶしていく感じでしょうか。
はっきりいって苦手です。でも大切ですね。がんばります。

Step5 : コンテンツを広める
ソーシャルメディアやPR、Eメールなどなど、様々なチャネルでコンテンツを知ってもらうフェーズ。
このアプローチには触れられてませんし、とくにオンラインにおけるコンテンツマーケティングの範疇ではないのかもしれませんけど、各種広告も検討の余地はあるでしょう。またウチの場合、セールスフォースも活用できるので、オフラインも含めて幅広にチャレンジしてみたいですね。

Step6 : コンテンツを流通させる
コンテンツを流通させるチャネルとその組み合わせ、それぞれのチャネルに合わせたコンテンツのチューニング。
ここでも、各種ソーシャルメディアを賢く使うことはとても大切ですね。

Step7 : リンク・ビルディング
おなじみリンクビルディング。全盛時にくらべるとその影響力の低下は否めないんでしょうけど、内部リンクも含め、真っ当かつ今できることがあるということでしょう。
とはいえ、本質的にはいい「コンテンツはリンクされる」というのが基本だと思います。
ちなみにワークショップでは驚くほど短時間でこのポイントを流しました。

Step8 : 成果を測る
ゴールにもとづく指標とベンチマークを決め、継続的に検証する。
これにより仮説立案と検証ができるうえ、オドロキを伴う考察を得られることもある。次の戦略、アクションを決めるためのキモですね。
    
以上が8つのステップの概要です。「ステップ」と表現されていますが、コンテンツマーケティングを構成する「要素」と言ってもいいかもしれませんね。


得られた成果をどう発信していくか?

まずは各ステップにはそれぞれ多様なテーマがあります。それらを「考える」→「実践する」→「振り返る」の3幕(3フェーズ)に分解します。

テーマ×フェーズが基本的にブログ1ネタの基本単位になります。これにより、徐々に網羅的なアーカイブに育ち、来訪者にはブログタイトルから読みたい内容を探しやすくなるんじゃないかと思います。

ブログは、基本的に実際担当したスタッフが書くようにします。つまり、私以外のブログもアップされてくる予定です。実際に汗をかいた者の実践ノウハウとしてご活用いただければ幸いでございます。


以上がいま考えている実験台プロジェクトの進め方です。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。



2013年5月14日火曜日

わたしたちイマジナクトラボは自らコンテンツマーケティングの実験台となり、その様子をブログなどで継続的に発信してまいります。

すこし前から考えていました。そして、「準備が整ってから」と思っていましたが、それじゃあ一向に進捗しないので、とりあえず始めようと思いました。心境としてはこんな感じですかね。

思い切っちゃおう!
©iStockphoto.com/Martin Allinger


そもそも「イマジナクトラボ」って何よ?

イマジナクトラボは2010年の6月に発足した株式会社大和広告の社内プロジェクトです。もともとはマーケティング、コミュニケーション、テクノロジーの社内研究プロジェクトとしてスタートしたのですが、徐々に「会社の外=社会」に対する志が固まってきました。

「企業や団体のマーケティング力アップに役立つ情報提供をつうじて地域活性化につなげたい」

広島県福山市という地方都市で育てていただいた私たちが、専門性を発揮できる領域で地域に貢献できることは何か?同時に私たちメンバーの成長にもつながる取り組みは?その問いを模索してきた3年間でした。

おもな取り組みはイマジナクトラボのウェブサイトをご覧いただければと思いますが、これまでに24回のセミナー・勉強会を開催、のべ886人の方にご参加いただいてます。フェイスブックページのファンは18,000人を超え(2013年5月14日現在)、その他各領域のエキスパートの方々のオリジナルインタビューなど、ほとんどのセミナー、コンテンツを基本的に無料でご提供しています。
県庁所在地でもない一地方都市からの取り組みとして、ここまで続けてこれた。これも地元経営者・マーケターの皆様、フェイスブックで支えてくださっている全国のファンの皆様のご理解がなければ実現しなかったと思います。ありがとうございます。


イマジナクトラボの課題って何よ?

そりゃもう課題は沢山ありますよ。

なかでも一番の課題だと思ってることは...

「わかる」と「できる」の間に流れる大河を越えられていないということ。

以前にくらべて格段に情報収集・発信量は増えました。ネット上だけではなくカンファレンスやコミュニティに参加し、国内外のオピニオンリーダーからの情報も直接収集、それらに基づいた考察を発信するようになりました。直近ではサンノゼで開催されたSMX WEST 2013に参加してきました。これにより、今のマーケティング業界のトレンドの全体像がクリアになり、実際に企業のマーケティングを支援させていただく上でもとても役立ってます。

でも結局は「他者の知見」をリアルセミナーやインタビュー、そしておもにキュレーションを中心としたソーシャル(とくにフェイスブック)偏重の情報発信をしていたのにすぎないんですよね。「他者の情報」に触れ、それらに考察を加えているだけではコンテンツマーケティング的な視点からして効果的ではないし、私たち自身が本当の意味で「新しいスキルを血肉化する」には至りませんよね。つまりウチの場合、とくにストック型の持論系コンテンツにおいて、下の図でいうところの「わかってるのにできない」状態(「わかる」→「できる」の大河を越えられずに岸にしがみついてる辺り?)に留まっているんじゃあないかと。ちょっと残念。

コンテンツマーケティングの実験台になろうとしているイマジナクトラボの現状
まだまだ「エキスパートですっ!」と胸張れない分、体張って成長を加速しようってワケです。



もちろん実践から得られた価値ある学びや資産も

とはいえ、不完全ながらも3年近く実践してきたイマジナクトラボの活動は私たちにいろんな学びをもたらしてくれました。「ソーシャル(フェイスブック)偏重」のいまのカタチが決して最適ではないとはいえ、実践の中でソーシャルメディアでフロー系コンテンツを取り扱うための知見など着実に蓄積されてきているし、そもそもマーケティングを支援する企業のなかで、マーケターにリアル・ネット両面で継続的かつオープンな学びの場(コンテンツとコミュニティ)を実際に提供している会社って、全国的にもそんなに多くないと思うんです。これは実践した会社しか得ることのできない、ウチならではのノウハウ、リソースですよね。
そしてイマジナクトラボの取り組み自体を「ソーシャル中心」から「コンテンツ中心」に進化させることで、リアルとネットを跨ぐ「コンテンツマーケティングの実践知」をもっと多く生み育てられると思うんです。


だったらイマジナクトラボでもっと過激に挑戦、その成果を情報発信すれば?

ラボの内幕を公開することは、メンバーが常に新しいことに挑戦する動機づけにもなるし、社外の方に見られているぶん一つひとつの施策を丁寧にやろうとする。ブログなどの記事にまとめるプロセスでしっかり反省できる。

しかも実践に基づくオリジナルな情報なので、読み手のみなさんにも貴重なケーススタディとして喜んでいただけるはず(内容にもよりますけどw)。しかも、ネット上にコンテンツが蓄積されていくことは地元だけでなく、全国のみなさんにもより多くの情報をご提供できることを意味します。ウチのフェイスブックページのファンは東京をはじめ全国に遍くいらっしゃるので、この流れはファンのみなさんにも歓迎していただけそうです。

メリットだらけではありませんか!


リスクもあるけど?

せっかくのノウハウを公開するのもリスキーですけど、社内でこっそりウマいことやろうと思っても、ウチの場合なかなか進捗しないのでもういいです。それに読者のみなさんも本当に実践しないと「できるゾーン」に到達しないだろうし。
そんなことより、まずはみなさんの役に立つ情報をご提供しないことにはね。


で、具体的には?

近日中に本稿の続編「わたしたちイマジナクトラボは自らコンテンツマーケティングの実験台となり、その様子をブログなどで継続的に発信してまいります。で、具体的には?」でお伝えいできればと思います。



さいごに

「実験台」とか言ってますけど、これらの取り組みはすべて最終的に私たち自身の成長につながること。私たちが成長するそのプロセスを通じて、みなさまのコンテンツマーケティングに役立つ実践的なブログを目指してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。あ、もちろん他のネタもやっていきますよ。

では今日はこのあたりで。

2013年4月20日土曜日

コンテンツマーケティングをストーリーの3幕構成の視点でまとめてみた。

前回のブログに書いたとおり、ストーリーテリングの力をビジネスに活かす「プレミス365プロジェクト」なる年間トレーニングプログラムの第一回ミートアップに行ってきました。第一回の開催場所は大阪。講師の岡田勲さん曰く「大阪にはプレミスの要素がてんこ盛り」なんだそうです。

今回のブートキャンプではユニークなワークアウトがありました。
お題は「道頓堀界隈でストーリーの視点からすぐれた看板を探して、トップ3の優先順位をつけ、説明を通じてそれを納得させろ」というもの。

©iStockphoto.com/GRAZVYDAS


このワークアウトの意味って何よ?

これを自分なりに考えてみました。
ストーリーを時間軸でとらえるとき「3幕構成」だと言われます。
これは基本構成としてあらゆるストーリーに適用されています。そしてストーリーは映画や小説だけではなく、人生をはじめあらゆるものに適用できるとも。
人の人生は①生まれて ②生きて ③死ぬという構成を必ずたどりますし、そのなかの一日もまた①朝起きて ②生きて ③寝て、次の一日(ストーリー)がはじまる。

これを「ある日のランチ」で考えると、①お店をみつけて入店し ②ランチとサービスを体験して ③なんらかの感想をもって店を出る→次の行動(ストーリー)に移る、となりますね。

この「生活者のランチ体験ストーリー」は「ランチにおける消費行動ファネル」「生活者体験シナリオ」とイメージが重なります。お店のオーナーは①店先で興味をもってもらって②美味しい料理、快適なサービス、インテリアなどの雰囲気などを体験してもらって③また来たいと思っていただくといった具合に「お客様に次どう行動してもらうか」をデザインしているとも言えると思います。

そう考えると、今回の「いい看板探してこい」は、「多くのお客さんが入店したいと思える優れたプレミスをもったお店を探してこい」だったんじゃないかと。
「いいプレミスはシンプルな一言で言い表わせ、話の中身が知りたくなるものだ」というのをよく聞きます。そういった意味では、いい看板や店頭のメニュー表などにはいいプレミスが宿っていて「お客様に入店してお店の世界観、ストーリーを体験したい」と思わせる力があるんじゃないかと思います。


じゃあ3幕構成をコンテンツマーケティングに当てはめてみると...

ストーリーはいろんなチャンクでコンテンツマーケティングに適用できると思います。
多くの人がイメージしやすいのは、個別のコンテンツの中でストーリーテリングを活用するところではないでしょうか。
視聴者の共感を醸成する動画コンテンツを制作する際にストーリーの理論を応用する、といったケースです。アリですよね。

今回は、もうちょっと上流部分、ストラテジーに近いところでのコンテンツマーケティングの典型的なカタチをを私なりに3幕にプロットしてみました。ジャーン。下の図がそれです。



①コンテンツを発見してもらい、興味をもってもらい
②実際にコンテンツを読んで(視聴して)もらった結果、
③満足してもらって、次の行動(シェア、いいね、他コンテンツ、再訪)に移っていただく。

前提として、あくまでこのストーリーのヒーロー(ヒロイン)はユーザーであること。これは常に心にとどめておきたいですね。そうしてはじめてユーザーに喜んでいただけるコンテンツマーケティングになるんだと思います。

と、今日はこのあたりで。





2013年4月13日土曜日

ストーリーを極めてコンテンツマーケティングに活かすため、一年間虎の穴に入ります。

私事ですが、先日腰をやってしまいました。安静中の身ではありますが、明日4月14日は這ってでも大阪にまいります。なぜなら記念すべき「プレミス365プロジェクト」第一回ミートアップ&キックオフだからです。


©iStockphoto.com/Tony_Kwan

「プレミス365プロジェクト」って何?

たぶん検索してもなにも出てこないと思います。このプロジェクト、ストーリーアーツ&サイエンス研究所の岡田勲さんが主宰する史上初の試みで、ビジネスに役立つストーリーの本質を学び「優れたストーリー、プレミスの使い手」になるための少人数1カ年虎の穴プロジェクトなんであります。


そもそもなぜストーリー?

近年巷には「ストーリー本」が沢山でていますね。
アマゾンでちょっと検索しただけでも...

ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books) 


などなど。ビジネスのコンテクストでストーリーを語った本が目立ちますね。
ビジネスにおいても「共感」が求められる時代だから当然といえば当然かもしれません。
また、ビジネスという「ロジカル」な世界に、ストーリーというなんとなく神秘的な「暗黙知」を組み合わせたところに好奇心を持たれる方も多いかもしれませんね。

本を読むときって、読み手のリテラシーが試されると思いませんか?
たとえば「ストーリー」と「マーケティング」について書かれた本であれば、前提として「ストーリーってなに?」と「マーケティングってなに?」という定義みたいなもんが著者との間で握れているかどうかが大切だと思うんです。じゃないと、著者のイイタイコトと読者の理解がずれていきますよね。とくに「ストーリー」のような暗黙知ジャンルは1人ひとりの定義が簡単にズレちゃうのではないかと。

だれでも個人的な専門領域に偏りがあります。上記例の本であれば、著者も読者も「マーケティング」か「ストーリー」どちらかに得意分野の軸足があるケースが多い。「マーケティング」のエキスパートであっても「ストーリー」の本質、要素、構成、構造、効果的なつくりかた、読み取り方などを知らなければ、いいストーリーマーケティング本は書けないし、読み手としても理解が浅く、実践で躓きやすくなってしまう。

「こりゃあワタクシもしっかり学ばねば!」

とまあ、そう思ったワケなんです。


私のストーリー遍歴

2007年〜2008年、デジタルハリウッド大学院ストーリーマーケティング研究室(当時)で元読売テレビの山本和夫先生のもとストーリー×マーケティングの研究にはじめて触れる。
対象はおもに「コンテンツづくりにおけるストーリーの応用」といった感じだったと思います。
ストーリーのチカラに魅力を感じるいいきっかけになったと思います。

2011年〜2012年、「神話の法則」の監訳者、岡田勲先生のもと「ストーリー」の基礎を学ぶ。ここではリニアなコンテンツにおけるストーリーの応用を超えて、ビジネスをはじめ森羅万象にストーリー性を見出したりすることの大切さを感じることができました。「こりゃビジネスに使えるな」と確信できたのもこのころ。同時に「一朝一夕にストーリーを使いこなせるようにはならんな」とも(できる人もいるとは思いますが)。

2013年、岡田さんより今回の「プレミス365プロジェクト」へのお誘いをいただく。ちょうどウチのコンテンツマーケティングへのストーリー理論の注入ができないものかと考え中だったこともあり、二つ返事でオッケー。

そんな感じです。

岡田勲さんの監訳本と過去の資料。これ以外にも様々なジャンルのネタが用意されます。


今とこれから

日々繰り出される100本ノック的なストーリーの課題をこなしております。毎日のように頭から煙を上げながらなんとかやってます。まあ、おもしろいからできるんでしょうね。

なんでも大阪の街にはストーリーの要素がてんこ盛りとのことで、第一回ミートアップ&キックオフ会場に決まったとのこと。めちゃくちゃ楽しみです。
また、虎の穴での学びをそのまま皆様にシェアすることは道義上できないかもしれませんけど(今回確認してみます)、学んだエッセンスから得られる考察なり、このブログで可能なかぎりアップしていきたいと思ってます。また、イマジナクトラボの取り組みにもガッツリ実践応用して、状況をシェアしたいですね。ご興味ある方、お楽しみに〜。

では、コルセット持参で出発だー!

2013年4月9日火曜日

コンテンツマーケティングにおけるブログの価値って何よ?


「花崎さん、ブログ書いてくださいよ。ブログ」


©iStockphoto.com/Alija

これは熊坂仁美さんからSMX West 2013に参加中に何度となく言われたこと。
以来「量産」とまではいかないものの、週1〜2回はブログをアップするようになったんです。
これが実にイイ!自分の考えを深めるいいキッカケになっていて、もっと早くからマジメにやっておけばよかったと思ってます。

また時を同じくしてあの池田紀行さん『「TwitterやFacebookの次は何が来るか」だって?そりゃお前、ブログに決まってんだろ!』というブログをアップ。話題になったので、お読みになった方も多いんじゃないでしょうか。すごく示唆に富んだ内容がとてもわかりやすくまとめられているので、まだお読みになっていない方はぜひ。

熊坂さんと池田さん。ソーシャルメディア領域のオピニオンリーダーたちが重要視するブログ。今回はコンテンツマーケティングにおけるブログの価値について、ワタクシなりに考えをまとめてみました。


今後コモディティ化するソーシャルメディア活用

Content Marketing Institute最新調査結果によると、アメリカでもB2Bにおけるソーシャルメディア活用は成長途上。ソーシャルメディア活用によるエンゲージメント醸成を実感する企業がまだまだ増加中なんですね。

日本国内でもここ数年でツイッター、フェイスブックをはじめとしたソーシャルメディア活用が一気に広がったとはいえ、まだまだ発展途上なんでしょう。そして最終的には今以上に「活用するのが当たり前」な状態になるんでしょうたぶん。

このようにソーシャル活用がコモディティ化してきたら、他との差別化が難しくなってきます。だからこそ、今まで以上に情報の「質=深さ」がモノをいう時代になってくると思うんです。そして、フェイスブックやツイッターはFLI(頻繁かつ軽量なインタラクション)が得意技。そうなると池田さんのブログでいうところの「思考や意見をシッカリ発信できる」ブログの特性がコンテンツマーケティング的にも効いてくるんじゃないかと。より役立つ情報や自社の世界観を「ディープに」発信することは差別化につながりますよね。


ストーリーテリングの視点でブログの価値を考える

「コンテンツマーケティングにはストーリーのチカラが必要だ」と言われることがあります。
ストーリーのエッセンスは登場するキャラクターの内面と出来事の変化です。
ある出来事が登場人物の内面に影響を与える。その心理変化が新たな行動を促し、別の出来事をもたらす。この繰り返しで物語が進行する。このように人物の内面(キャラクター)と出来事の移り変わり(プロット)という2つの要素はストーリーにおいては不可欠、不可分なものなんですね。

そしてキャラクターは「感情」と言いかえることができ、プロットは筋書き、つまり「ロジック」を象徴しています。つまり、ストーリーには「感情」も「ロジック」も必要なんですね。

これをコンテンツマーケティングに置き換えると、フェイスブック、ツイッターやLINEなど最近ブレイクしたサービスはおもに「感情」を掌るものが多いと思いませんか?(下図参照)



人々の「感情」に働きかけ、共感を得ることはとても大事。でもそれだけでは足りない。同時に「ロジック」を発信するチャネルをもつことが大切なんだと思います。そしてそれは、ストーリーのチカラをマーケティングに活かすことに他ならないと。まさにブログの出番ですねコレは。


うーむ。考えれば考えるほど、ブログの価値ってこれからますます高まる気がしてきました。








2013年4月2日火曜日

優れたアイデアの要件。「新しい」って具体的にはどういうこと?

©iStockphoto.com/Peter Booth

前回の投稿では、優れたアイデアの要件として「対極」または「多様な」要素の組み合わせについて採り上げました。

今回はその続編。本題に入るにあたり、もう一回だけ例のアイデア本の名著「アイデアのつくり方」(ジェームスWヤング−著/今井茂雄−訳/竹内均−解説)のアイデアの定義を思い出してみますと...

「アイデアは既存の要素の新しい組み合わせ」

そう。そうでした。前回はこの定義から「どう組み合わせれば優れたアイデアになりやすいか?」にフォーカスして考察したわけですね。

で、今回は「新しい組み合わせ」の「新しい」っていったい何よ?について考えてみたいと思います。


「アイデアの新しさ」って何?


私は「アイデアの新しさ」=『自分の中にある「既知」との距離』という意味だと思っています。

わかりやすく言うと「自分自身の経験、知識、パラダイムなどとのズレ加減」とでも言いましょうか。だとすれば、自分自身内面のデータベースに照らしてみてズレが大きければ大きいほど(自分の中の「既知」との距離が大きいほど)、その人にとって「新しい」ってことになりますね。


アイデアは新しけりゃいいってもんでもない

では、アイデアは情報の受け手にとって新しければいいのか?
私はちょっと違うんじゃないかと思ってます。
それは、新しすぎると情報の受け手がアイデアの価値を理解できなくなっちゃうからです。



もちろん、「既知」に近すぎてもダメ。「既知」と「アイデア」のほどよい距離感をキープするのが大切なんですね。





「半歩先」を意識したユーミンとLINE

ながらく音楽界の第一線で活躍している松任谷由実さんは、「時代の半歩先」をつねに意識していたと言われています。
芸術性やご自身の美学を表現する一方で、多くの支持を得なければならない音楽業界において、一歩先を行けばその楽曲を理解できないリスナーが出てきてしまうということを直感的に感じていたのではないでしょうか。

このことは、テック系サービスにも当てはまるかもしれません。
たとえばLINE。いままさに劇的なスピードで市場に浸透していますよね。
このサービスのキャッチフレーズは「無料通話・無料メールアプリ LINE」です。
欧米生まれのアプリ市場か香り立つエッジの効いたクールな印象は無縁です。でも、テキスト中心だったスマホでのコミュニケーションをスタンプによる情緒的なものを付加することで多くのユーザーを惹きつけました。
きめ細かく練り上げられた「半歩先」のサービスだからこそマジョリティからの理解も得られやすくキャズム越えがあまり大きな問題になりません。いやむしろ「マジョリティ」サイドから火がついたような印象を受けます。
勉強になります。


アイデアに求められる新しさは...

これまで「半歩先」「既知とのほどよい距離感」と、なんとも曖昧な表現でやり過ごしてきた訳ですがw、もう少し明確に言えば


「ターゲットユーザー、オーディエンスの「既知」に重なる要素と外れる要素を両方兼ね備えていること」

これこそが「ほどよい距離感」「半歩先」の正体なのではないかと思うわけであります。
で、重なりこそが「レレバント」であり、外しの部分は「純粋な新規性」に相当すると。
もちろん「重なり」と「外し」の配合はケースに応じて戦略的に変えていいと思うんですけど、「両方兼ね備えている」ことはマーケットに受け入れられる上で、とても大切だと思いますハイ。


(イラスト/ふじいかつなり