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2013年4月2日火曜日

優れたアイデアの要件。「新しい」って具体的にはどういうこと?

©iStockphoto.com/Peter Booth

前回の投稿では、優れたアイデアの要件として「対極」または「多様な」要素の組み合わせについて採り上げました。

今回はその続編。本題に入るにあたり、もう一回だけ例のアイデア本の名著「アイデアのつくり方」(ジェームスWヤング−著/今井茂雄−訳/竹内均−解説)のアイデアの定義を思い出してみますと...

「アイデアは既存の要素の新しい組み合わせ」

そう。そうでした。前回はこの定義から「どう組み合わせれば優れたアイデアになりやすいか?」にフォーカスして考察したわけですね。

で、今回は「新しい組み合わせ」の「新しい」っていったい何よ?について考えてみたいと思います。


「アイデアの新しさ」って何?


私は「アイデアの新しさ」=『自分の中にある「既知」との距離』という意味だと思っています。

わかりやすく言うと「自分自身の経験、知識、パラダイムなどとのズレ加減」とでも言いましょうか。だとすれば、自分自身内面のデータベースに照らしてみてズレが大きければ大きいほど(自分の中の「既知」との距離が大きいほど)、その人にとって「新しい」ってことになりますね。


アイデアは新しけりゃいいってもんでもない

では、アイデアは情報の受け手にとって新しければいいのか?
私はちょっと違うんじゃないかと思ってます。
それは、新しすぎると情報の受け手がアイデアの価値を理解できなくなっちゃうからです。



もちろん、「既知」に近すぎてもダメ。「既知」と「アイデア」のほどよい距離感をキープするのが大切なんですね。





「半歩先」を意識したユーミンとLINE

ながらく音楽界の第一線で活躍している松任谷由実さんは、「時代の半歩先」をつねに意識していたと言われています。
芸術性やご自身の美学を表現する一方で、多くの支持を得なければならない音楽業界において、一歩先を行けばその楽曲を理解できないリスナーが出てきてしまうということを直感的に感じていたのではないでしょうか。

このことは、テック系サービスにも当てはまるかもしれません。
たとえばLINE。いままさに劇的なスピードで市場に浸透していますよね。
このサービスのキャッチフレーズは「無料通話・無料メールアプリ LINE」です。
欧米生まれのアプリ市場か香り立つエッジの効いたクールな印象は無縁です。でも、テキスト中心だったスマホでのコミュニケーションをスタンプによる情緒的なものを付加することで多くのユーザーを惹きつけました。
きめ細かく練り上げられた「半歩先」のサービスだからこそマジョリティからの理解も得られやすくキャズム越えがあまり大きな問題になりません。いやむしろ「マジョリティ」サイドから火がついたような印象を受けます。
勉強になります。


アイデアに求められる新しさは...

これまで「半歩先」「既知とのほどよい距離感」と、なんとも曖昧な表現でやり過ごしてきた訳ですがw、もう少し明確に言えば


「ターゲットユーザー、オーディエンスの「既知」に重なる要素と外れる要素を両方兼ね備えていること」

これこそが「ほどよい距離感」「半歩先」の正体なのではないかと思うわけであります。
で、重なりこそが「レレバント」であり、外しの部分は「純粋な新規性」に相当すると。
もちろん「重なり」と「外し」の配合はケースに応じて戦略的に変えていいと思うんですけど、「両方兼ね備えている」ことはマーケットに受け入れられる上で、とても大切だと思いますハイ。


(イラスト/ふじいかつなり




2013年3月29日金曜日

「優れたアイデア」の要件について考えてみた。

©iStockphoto.com/Lisa-Blue

書棚の奥から、じつに20年以上前、就活中に買って読んだ「アイデアのつくり方」(ジェームスWヤング−著/今井茂雄−訳/竹内均−解説)が出てきた。懐かしさと、解説、あとがき含め100ページというコンパクトなボリュームも相まってひさしぶりに一気に読んでみた。

「アイデアとは既存の要素のあたらしい組み合わせ」であること。そして「関連性を見出すチカラ」の大切さをこの20年の実務経験に照らして以前より深く理解できたワケですが...

『ところで優れたアイデアと平凡なアイデアの違いって何よ?』

という疑問が。
そこでこの際、優れたアイデアに関する私なりの考察をまとめてみたいと思います。


アイデアが生まれやすい場、みんなどう創ってる?
まずは、環境面から優れたアイデアのヒントを考えてみました。
キーワードとして思いついたのが...
・弱い紐帯
・メディチ・エフェクト
・2つのAL

「弱い紐帯のつよさ」はソーシャルメディアの文脈でもよく語られますよね。家族や同僚のように身近な人よりも、むしろ「ちょっとした知り合い」のような緩い関係から未知かつ重要な情報はもたらされる、という例のヤツです。

「メディチ・エフェクト」というのは15世紀のイタリア・ルネッサンスのメディチ家に由来した「どんどんイノベーションが生まれること」を指すコトバ。当時のフィレンツェは芸術家、哲学者、科学者、金融業者、建築家などなど、多種多様な人々が集まり、互いに情報交換をできたために、画期的なアイデアが生まれやすく、それが繁栄の源泉だったといわれています。詳しくはコチラの本に書いてあります。

「2つのAL」とは私自身がこれまでに出会った2つの異なる学習、発想メソッドのこと。

まずは「アクティブ・ラーニング」。これはハーバード大学から優秀指導証書を与えられた羽根拓也先生が提唱する学び、発想など「人の成長」汎用できるメソッド。異業種・異分野の人々がコラボする場が新しいアイデアにつながるという思想が多分に盛り込まれています。
もう一つは「アクション・ラーニング」。こちらは「質問を通じて個人と組織の学びを深め、問題解決と個人・組織の能力開発を一気に行う」メソッド。欧米では半世紀以上の実績があるようです。参加メンバーのポイントは多様性。これはタコツボ的な暗黙の前提を避けるためでしょう。


「エル・ブリ」のフェラン・アドリアに学ぶ 
45席の店に年間200万件の予約希望が殺到する伝説のレストラン「エル・ブリ」。惜しまれつつ2011年クローズしたこの店のオーナーシェフ、フェラン・アドリアは毎年半年間休業し、新メニューの開発に専念したといいます。その様子はドキュメンタリー映画にもなりましたね。
人気の秘密は「オドロキ」のメニュー開発。たとえば、薬局で売っているオブラートを料理に使ったり、亜酸化窒素ガスを使って食材を泡にする「エスプーマ」を開発したり。とにかくクリエイティビティが圧倒的。まさに「既存要素の新しい組み合わせ」ですよね。
しかも、「グルメ」と「薬」、「グルメ」と「化学」という対極の組み合わせ。
ほんと天才ですねハハ。



「多様性」「対極」がポイント
こうして見ていくと、「多様な」「対極の」要素の組み合わせは、アイデアづくりの「環境」としてだけでなく、「優れたアイデア」それ自体の要件だともいえるんじゃないでしょうか。異なるバックグラウンド同士の対話からは、多様な価値観、前提、考え方の交換が起こります。それこそが、優れたアイデアの本質なんじゃあないかと思うんです。一人でなにかアイデアを考えるときにも擬似的に同じ条件をつくってみる。そんなことを試してみるのも面白いかもしれませんね。


あ、それともう一つ。組み合わせ自体があまりにもブッ飛びすぎると、みんながついて来れないかもしれないので、「既知」と「未知」の配合バランスも同時に考えあわせる必要があるんじゃあないかなと思います。これについては、また別の機会に。