2013年4月20日土曜日

コンテンツマーケティングをストーリーの3幕構成の視点でまとめてみた。

前回のブログに書いたとおり、ストーリーテリングの力をビジネスに活かす「プレミス365プロジェクト」なる年間トレーニングプログラムの第一回ミートアップに行ってきました。第一回の開催場所は大阪。講師の岡田勲さん曰く「大阪にはプレミスの要素がてんこ盛り」なんだそうです。

今回のブートキャンプではユニークなワークアウトがありました。
お題は「道頓堀界隈でストーリーの視点からすぐれた看板を探して、トップ3の優先順位をつけ、説明を通じてそれを納得させろ」というもの。

©iStockphoto.com/GRAZVYDAS


このワークアウトの意味って何よ?

これを自分なりに考えてみました。
ストーリーを時間軸でとらえるとき「3幕構成」だと言われます。
これは基本構成としてあらゆるストーリーに適用されています。そしてストーリーは映画や小説だけではなく、人生をはじめあらゆるものに適用できるとも。
人の人生は①生まれて ②生きて ③死ぬという構成を必ずたどりますし、そのなかの一日もまた①朝起きて ②生きて ③寝て、次の一日(ストーリー)がはじまる。

これを「ある日のランチ」で考えると、①お店をみつけて入店し ②ランチとサービスを体験して ③なんらかの感想をもって店を出る→次の行動(ストーリー)に移る、となりますね。

この「生活者のランチ体験ストーリー」は「ランチにおける消費行動ファネル」「生活者体験シナリオ」とイメージが重なります。お店のオーナーは①店先で興味をもってもらって②美味しい料理、快適なサービス、インテリアなどの雰囲気などを体験してもらって③また来たいと思っていただくといった具合に「お客様に次どう行動してもらうか」をデザインしているとも言えると思います。

そう考えると、今回の「いい看板探してこい」は、「多くのお客さんが入店したいと思える優れたプレミスをもったお店を探してこい」だったんじゃないかと。
「いいプレミスはシンプルな一言で言い表わせ、話の中身が知りたくなるものだ」というのをよく聞きます。そういった意味では、いい看板や店頭のメニュー表などにはいいプレミスが宿っていて「お客様に入店してお店の世界観、ストーリーを体験したい」と思わせる力があるんじゃないかと思います。


じゃあ3幕構成をコンテンツマーケティングに当てはめてみると...

ストーリーはいろんなチャンクでコンテンツマーケティングに適用できると思います。
多くの人がイメージしやすいのは、個別のコンテンツの中でストーリーテリングを活用するところではないでしょうか。
視聴者の共感を醸成する動画コンテンツを制作する際にストーリーの理論を応用する、といったケースです。アリですよね。

今回は、もうちょっと上流部分、ストラテジーに近いところでのコンテンツマーケティングの典型的なカタチをを私なりに3幕にプロットしてみました。ジャーン。下の図がそれです。



①コンテンツを発見してもらい、興味をもってもらい
②実際にコンテンツを読んで(視聴して)もらった結果、
③満足してもらって、次の行動(シェア、いいね、他コンテンツ、再訪)に移っていただく。

前提として、あくまでこのストーリーのヒーロー(ヒロイン)はユーザーであること。これは常に心にとどめておきたいですね。そうしてはじめてユーザーに喜んでいただけるコンテンツマーケティングになるんだと思います。

と、今日はこのあたりで。





2013年4月13日土曜日

ストーリーを極めてコンテンツマーケティングに活かすため、一年間虎の穴に入ります。

私事ですが、先日腰をやってしまいました。安静中の身ではありますが、明日4月14日は這ってでも大阪にまいります。なぜなら記念すべき「プレミス365プロジェクト」第一回ミートアップ&キックオフだからです。


©iStockphoto.com/Tony_Kwan

「プレミス365プロジェクト」って何?

たぶん検索してもなにも出てこないと思います。このプロジェクト、ストーリーアーツ&サイエンス研究所の岡田勲さんが主宰する史上初の試みで、ビジネスに役立つストーリーの本質を学び「優れたストーリー、プレミスの使い手」になるための少人数1カ年虎の穴プロジェクトなんであります。


そもそもなぜストーリー?

近年巷には「ストーリー本」が沢山でていますね。
アマゾンでちょっと検索しただけでも...

ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books) 


などなど。ビジネスのコンテクストでストーリーを語った本が目立ちますね。
ビジネスにおいても「共感」が求められる時代だから当然といえば当然かもしれません。
また、ビジネスという「ロジカル」な世界に、ストーリーというなんとなく神秘的な「暗黙知」を組み合わせたところに好奇心を持たれる方も多いかもしれませんね。

本を読むときって、読み手のリテラシーが試されると思いませんか?
たとえば「ストーリー」と「マーケティング」について書かれた本であれば、前提として「ストーリーってなに?」と「マーケティングってなに?」という定義みたいなもんが著者との間で握れているかどうかが大切だと思うんです。じゃないと、著者のイイタイコトと読者の理解がずれていきますよね。とくに「ストーリー」のような暗黙知ジャンルは1人ひとりの定義が簡単にズレちゃうのではないかと。

だれでも個人的な専門領域に偏りがあります。上記例の本であれば、著者も読者も「マーケティング」か「ストーリー」どちらかに得意分野の軸足があるケースが多い。「マーケティング」のエキスパートであっても「ストーリー」の本質、要素、構成、構造、効果的なつくりかた、読み取り方などを知らなければ、いいストーリーマーケティング本は書けないし、読み手としても理解が浅く、実践で躓きやすくなってしまう。

「こりゃあワタクシもしっかり学ばねば!」

とまあ、そう思ったワケなんです。


私のストーリー遍歴

2007年〜2008年、デジタルハリウッド大学院ストーリーマーケティング研究室(当時)で元読売テレビの山本和夫先生のもとストーリー×マーケティングの研究にはじめて触れる。
対象はおもに「コンテンツづくりにおけるストーリーの応用」といった感じだったと思います。
ストーリーのチカラに魅力を感じるいいきっかけになったと思います。

2011年〜2012年、「神話の法則」の監訳者、岡田勲先生のもと「ストーリー」の基礎を学ぶ。ここではリニアなコンテンツにおけるストーリーの応用を超えて、ビジネスをはじめ森羅万象にストーリー性を見出したりすることの大切さを感じることができました。「こりゃビジネスに使えるな」と確信できたのもこのころ。同時に「一朝一夕にストーリーを使いこなせるようにはならんな」とも(できる人もいるとは思いますが)。

2013年、岡田さんより今回の「プレミス365プロジェクト」へのお誘いをいただく。ちょうどウチのコンテンツマーケティングへのストーリー理論の注入ができないものかと考え中だったこともあり、二つ返事でオッケー。

そんな感じです。

岡田勲さんの監訳本と過去の資料。これ以外にも様々なジャンルのネタが用意されます。


今とこれから

日々繰り出される100本ノック的なストーリーの課題をこなしております。毎日のように頭から煙を上げながらなんとかやってます。まあ、おもしろいからできるんでしょうね。

なんでも大阪の街にはストーリーの要素がてんこ盛りとのことで、第一回ミートアップ&キックオフ会場に決まったとのこと。めちゃくちゃ楽しみです。
また、虎の穴での学びをそのまま皆様にシェアすることは道義上できないかもしれませんけど(今回確認してみます)、学んだエッセンスから得られる考察なり、このブログで可能なかぎりアップしていきたいと思ってます。また、イマジナクトラボの取り組みにもガッツリ実践応用して、状況をシェアしたいですね。ご興味ある方、お楽しみに〜。

では、コルセット持参で出発だー!

2013年4月9日火曜日

コンテンツマーケティングにおけるブログの価値って何よ?


「花崎さん、ブログ書いてくださいよ。ブログ」


©iStockphoto.com/Alija

これは熊坂仁美さんからSMX West 2013に参加中に何度となく言われたこと。
以来「量産」とまではいかないものの、週1〜2回はブログをアップするようになったんです。
これが実にイイ!自分の考えを深めるいいキッカケになっていて、もっと早くからマジメにやっておけばよかったと思ってます。

また時を同じくしてあの池田紀行さん『「TwitterやFacebookの次は何が来るか」だって?そりゃお前、ブログに決まってんだろ!』というブログをアップ。話題になったので、お読みになった方も多いんじゃないでしょうか。すごく示唆に富んだ内容がとてもわかりやすくまとめられているので、まだお読みになっていない方はぜひ。

熊坂さんと池田さん。ソーシャルメディア領域のオピニオンリーダーたちが重要視するブログ。今回はコンテンツマーケティングにおけるブログの価値について、ワタクシなりに考えをまとめてみました。


今後コモディティ化するソーシャルメディア活用

Content Marketing Institute最新調査結果によると、アメリカでもB2Bにおけるソーシャルメディア活用は成長途上。ソーシャルメディア活用によるエンゲージメント醸成を実感する企業がまだまだ増加中なんですね。

日本国内でもここ数年でツイッター、フェイスブックをはじめとしたソーシャルメディア活用が一気に広がったとはいえ、まだまだ発展途上なんでしょう。そして最終的には今以上に「活用するのが当たり前」な状態になるんでしょうたぶん。

このようにソーシャル活用がコモディティ化してきたら、他との差別化が難しくなってきます。だからこそ、今まで以上に情報の「質=深さ」がモノをいう時代になってくると思うんです。そして、フェイスブックやツイッターはFLI(頻繁かつ軽量なインタラクション)が得意技。そうなると池田さんのブログでいうところの「思考や意見をシッカリ発信できる」ブログの特性がコンテンツマーケティング的にも効いてくるんじゃないかと。より役立つ情報や自社の世界観を「ディープに」発信することは差別化につながりますよね。


ストーリーテリングの視点でブログの価値を考える

「コンテンツマーケティングにはストーリーのチカラが必要だ」と言われることがあります。
ストーリーのエッセンスは登場するキャラクターの内面と出来事の変化です。
ある出来事が登場人物の内面に影響を与える。その心理変化が新たな行動を促し、別の出来事をもたらす。この繰り返しで物語が進行する。このように人物の内面(キャラクター)と出来事の移り変わり(プロット)という2つの要素はストーリーにおいては不可欠、不可分なものなんですね。

そしてキャラクターは「感情」と言いかえることができ、プロットは筋書き、つまり「ロジック」を象徴しています。つまり、ストーリーには「感情」も「ロジック」も必要なんですね。

これをコンテンツマーケティングに置き換えると、フェイスブック、ツイッターやLINEなど最近ブレイクしたサービスはおもに「感情」を掌るものが多いと思いませんか?(下図参照)



人々の「感情」に働きかけ、共感を得ることはとても大事。でもそれだけでは足りない。同時に「ロジック」を発信するチャネルをもつことが大切なんだと思います。そしてそれは、ストーリーのチカラをマーケティングに活かすことに他ならないと。まさにブログの出番ですねコレは。


うーむ。考えれば考えるほど、ブログの価値ってこれからますます高まる気がしてきました。








2013年4月2日火曜日

優れたアイデアの要件。「新しい」って具体的にはどういうこと?

©iStockphoto.com/Peter Booth

前回の投稿では、優れたアイデアの要件として「対極」または「多様な」要素の組み合わせについて採り上げました。

今回はその続編。本題に入るにあたり、もう一回だけ例のアイデア本の名著「アイデアのつくり方」(ジェームスWヤング−著/今井茂雄−訳/竹内均−解説)のアイデアの定義を思い出してみますと...

「アイデアは既存の要素の新しい組み合わせ」

そう。そうでした。前回はこの定義から「どう組み合わせれば優れたアイデアになりやすいか?」にフォーカスして考察したわけですね。

で、今回は「新しい組み合わせ」の「新しい」っていったい何よ?について考えてみたいと思います。


「アイデアの新しさ」って何?


私は「アイデアの新しさ」=『自分の中にある「既知」との距離』という意味だと思っています。

わかりやすく言うと「自分自身の経験、知識、パラダイムなどとのズレ加減」とでも言いましょうか。だとすれば、自分自身内面のデータベースに照らしてみてズレが大きければ大きいほど(自分の中の「既知」との距離が大きいほど)、その人にとって「新しい」ってことになりますね。


アイデアは新しけりゃいいってもんでもない

では、アイデアは情報の受け手にとって新しければいいのか?
私はちょっと違うんじゃないかと思ってます。
それは、新しすぎると情報の受け手がアイデアの価値を理解できなくなっちゃうからです。



もちろん、「既知」に近すぎてもダメ。「既知」と「アイデア」のほどよい距離感をキープするのが大切なんですね。





「半歩先」を意識したユーミンとLINE

ながらく音楽界の第一線で活躍している松任谷由実さんは、「時代の半歩先」をつねに意識していたと言われています。
芸術性やご自身の美学を表現する一方で、多くの支持を得なければならない音楽業界において、一歩先を行けばその楽曲を理解できないリスナーが出てきてしまうということを直感的に感じていたのではないでしょうか。

このことは、テック系サービスにも当てはまるかもしれません。
たとえばLINE。いままさに劇的なスピードで市場に浸透していますよね。
このサービスのキャッチフレーズは「無料通話・無料メールアプリ LINE」です。
欧米生まれのアプリ市場か香り立つエッジの効いたクールな印象は無縁です。でも、テキスト中心だったスマホでのコミュニケーションをスタンプによる情緒的なものを付加することで多くのユーザーを惹きつけました。
きめ細かく練り上げられた「半歩先」のサービスだからこそマジョリティからの理解も得られやすくキャズム越えがあまり大きな問題になりません。いやむしろ「マジョリティ」サイドから火がついたような印象を受けます。
勉強になります。


アイデアに求められる新しさは...

これまで「半歩先」「既知とのほどよい距離感」と、なんとも曖昧な表現でやり過ごしてきた訳ですがw、もう少し明確に言えば


「ターゲットユーザー、オーディエンスの「既知」に重なる要素と外れる要素を両方兼ね備えていること」

これこそが「ほどよい距離感」「半歩先」の正体なのではないかと思うわけであります。
で、重なりこそが「レレバント」であり、外しの部分は「純粋な新規性」に相当すると。
もちろん「重なり」と「外し」の配合はケースに応じて戦略的に変えていいと思うんですけど、「両方兼ね備えている」ことはマーケットに受け入れられる上で、とても大切だと思いますハイ。


(イラスト/ふじいかつなり